A LOST AND FOUND

色々なものを失くしてきたような気がします。

大規模修繕を担当してみて、その厄介さに身も震えましたの1

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建築物の「老朽化」は、否応なく進む。

ビル、マンションなどで15年もたつと考えなくてはならないのが、大規模修繕をどこまでやるのかということ。

テナントを抱えているビルにおいては、特に空調も検討しなくてはならない。

要するに、想像力を超えた事態が出現してくるのである。

大規模修繕を現在も対応している「ビル管理者」の当事者として、思いついたことを書いていく。

特定を避けるためにアバウトに表記していくが、底地200坪、階数6階。結構規模が大きいらしい。

今回は、防水。

2年前の大型台風の直撃で、面白いように雨が「漏水」してしまって、シーリングの更新が急務というのが、そもそものとっかかりであった。

防水系の会社においでいただくこと10数社。外壁清掃の会社もひっくるめておよび申し上げた。

何しろ、全くの素人。ビル管理など生まれてこの方やったことがない。聞くしかない。

所有権移転の末のビルなので、残っている資料が完ぺきではなく、設計図面しかなく、完成図面がない。開けてびっくり、のこともあって、気が遠くなる作業。

1年かけてようやく決定「させた」。きりがないから。中堅のゼネコン系。

とにかく、オリンピックが間近。または新規のマンション、ビルの建築ラッシュ。全体的に人手が、圧倒的に足りていない。今すぐになんて、できる状態ではない。

早くて「半年後」。今のメンテナンス系はとにかく時間がかかりすぎて残念。

kabumatome.doorblog.jp

シーリングという、壁全体に走る壁と壁の間を「ふさぐ」プニョプニョした感じのゴム状のやつ。これが劣化すると、壁から水が入り込んで大変なことになる。よく窓のサッシに壁面との接合部分に走る灰色のやつ。

そのシールの距離が各社ものすごく違った。短いところもあれば、よくぞこんなところまで見つけては足しこんでいるなという塩梅で、この見積もり段階で、かなり各社の技術的なレベルが判断できる。

難しい建物なので(形状が)、足場だけでなく、ゴンドラも併用ということになり、さらに屋上には所せましと、キュービクル、室外機がごちゃごちゃ並んでいるんで、ゴンドラ屋さんもとにかく大変。

当然、ランドマークとか新宿の高層ビルを手掛けた会社さんは、見積もりに来る方自体がスペシャリストさんだが、いかんせん、高い。

ゼネコン系は、当然のように、2次請け3次請けを使ってくるので、平気で見積もりに管理費とか養生費で、上乗せをしてくる。お前んちは、名前と見積もりと集金業務だけかよ!とかね。

地元の業者さんは、おそろしく担当者が高齢。技術も、目も確かなんだろうが、次の大規模修繕の時には、あんたの会社が無いだろう。

そうそう、当然ながらこの建物を建てた時の業者リストがあるんで、連絡はするものの、シーリング業者は当然ながら「ただ今おかけになった電話番号は」という次第だし、壁面パネル業者も、すでに別業態に変わっておるしで使えません。

いいですか、建物を管理するということは、30年、いや40年、気の遠くなる年月を見通さなくてはならないわけです。その際、修繕記録はあるものの、次の時期に修繕をする際、紙ベースの記録なんて、本当にあてになりません。

技術も進歩するし、値段も変わります。素材だって全然違ったものになるからです。

ここは本当に大事なことです。

よく、国とか自治体の施工業者の選定で、「随意契約」が問題になって、入札による公平性が議論されておりますが、いや、当事者になればなるほど、こういう業務は、安いからって、頑張るからって良いとは限りません。

2年後潰れてもらったら困るんです。特にインフラ系は。

修繕記録含めて、一度決めた業者に、末永く管理してもらったほうが、色んな意味で助かります。だって、公務員が40年も同じ業務を担当していることなんてないでしょ?

これやるまで、シール技術に防水系技術に「資格試験」があって、業界団体があって、とか知りませんでしたから。

しかも最近は、平気で「断ります」。「新築工事関係はやりますが、修繕はやりません」という世界ですよ!

修繕は、本当に大変な作業なんです!

やったことが無い人間が、口を挟んで済む問題ではない。多少、しがらみとか親族が関係している会社が選定されているからなんて、大した問題ではない。問題にしなくてはならないのは、工事した修繕した箇所に不具合があった際の補償や保証。

そして20年だとか30年。担当者が変わっても、次の人間がちゃんと歴史も記録も、人的な関係性の中で記録を紡いでくれるかどうか。それが一番。

 

将来、インフラは全てが更新なり、修繕を繰り返しながら「維持」させていく世界に突入してくるわけなんで、特に公共財は、多少割高になったとしても、本気でそれを維持管理してくれる会社を選定しておかないと、

みずほ銀行のシステム更新じゃないけど、その場で集めた会社なり技術者が、明日から修繕を始められるなんてことは、まず、無理だから。ここは理解しておいた方がいいと思います。

ちょっと脇道にずれすぎました。何回かにわけて書きます。